AVENUE Education大好評企画【医療×(カケル)】を開催しました!

今回は、その開催レポートをお届けします。

誤解だらけ?中高生に知ってほしい医学生の実情

中高生に限らず、「医学生」と聞いて、このようなイメージを思い浮かべる人はたくさんいます。

  • 大学は勉強ばかりで大変でしょう?
  • 医学部に進学した時点で将来進みたい診療科は決めているんでしょう?
  • 将来は絶対に医者になるんでしょう?

ぜひ医師・医学部を目指す中高生の皆さんに知っていただきたいのが、こういった医学生に対するイメージは誤解であるということです。

もちろん、将来人の生命に関わる医師になるわけですから、そのための勉強は大変です。
ですが、勉強が大変だからといって勉強ばかりしているわけではありません。

医学生の勉強と診療科を決めるタイミング

大学によりカリキュラムは多少異なりますが、横浜市立大学の医学部医学科では、1年生と2年生で基礎科目を学習し、3年生から臨床科目がスタートします。

4年生では、臨床実習を行う前に、医師としての知識・素質を問うCBT(シービーティー)・OSCE(オスキー)という試験に合格する必要があります。

CBT・OSCEに無事合格すると、5年生から臨床実習がスタートします。ただしここ時点ではまだ将来進む診療科は決まっていません。

診療科を決めるのは、6年生の国家試験を合格後、2年の初期研修を経てからです。

そのため、医学部に進学する時点で診療科を決める必要はありませんし、決めている人は少数派かもしれません。

このようにさまざまな勉強・試験を経て、医学生は医師になっていきますが、勉強だけをしているわけではありません。

医学生が勉強以外に取り組んでいること

そのうちの一つが、部活動です。

医学部はサークルではなく「部活動」があり、多くの医学生が何かしらの部活動に所属しています。

部活動は、活動に力を入れている部もあればゆるく楽しんでいる部もありますが、部活動に所属することで、同級生や先輩後輩とのつながりを持つことができます。

またアルバイトに励む医学生も多くいます。

アルバイトはお金を稼ぐことができるだけではなく、社会経験や学外以外の人とつながるきっかけにもなります。

このようにさまざまな活動を経て、医学生は医師になるかと言われれば、一概にそうは言い切れません。医師の仕事は多様化し、さまざまな選択肢があります。

医学生になる前に、「どんな医学生になるのか?」を想像してほしい

このように、さまざまな選択肢があるからこそ、ただ医学生になるのではなく、「どのような医学生になるのか?」が重要になります。

医学生は、全大学生のうち5〜6%しか存在していません。また医師の卵であり、時間やエネルギーがあるため、さまざまなことに挑戦することができます。

医師の仕事は多様化しているにもかかわらず、「医学生から医師になる」という閉じた世界で過ごしてしまうのは大変もったいないことです。

そこで今回は、医学生を目指す中高生に、医学生になったあとの視野を広げてたくさんの可能性を感じてもらうために、「医療×宇宙」をテーマに、宇宙医学に関して積極的に活動されている石橋拓真さん(東京大学医学部医学科・6年)にご講演をいただきました。

石橋拓真さんのご講演

今回、ゲストスピーカーとしてお話しいただいたのは、東京大学医学部医学科6年生の石橋拓真さんです。

石橋さんは大学1年生の頃から航空宇宙医学のサークルを立ち上げ、運営されています。
はじめこそ学生サークルだったものの、現在では、JAXAから仕事を請け負ったり、他大学の先生の論文をお手伝いしたりしているそうです。

「医療×宇宙」の分野で精力的に活動されている石橋さんから、医師や医学部を目指す中高生に向けて、

  • 石橋さんが医師を志したきっかけ
  • 宇宙医学との出会い
  • 石橋さんが団体・プロジェクトを立ち上げるに至った経緯

これらについてお話しいただきました。

石橋さんが医師を志したきっかけ

石橋さんは、最難関とも言える東京大学医学部医学科に在籍されています。

この事実からすれば、石橋さんは中学生や高校生の頃から勉強一筋で努力してきたのだろう、と思う方がほとんどでしょう。

しかし石橋さんは、「決してそんなことはなかった」と話します。

小学生の頃から野球に没頭し、高校生時代にはさまざまな部活動・同好会を掛け持ちし、部活動と行事ばかり、塾にも行かず、全く勉強していなかったそうです。

「一見すると医学部なんて目指しそうな感じではなかったのに、なぜ医学部を目指したのか?」

石橋さんが投げかけたこの問いに対する答えは、石橋さんの幼少期まで遡ります。

将来の夢は「宇宙飛行士」

石橋さんは幼い頃から宇宙飛行士を目指していました。

今でこそ宇宙飛行士になるための条件は緩和されているものの、当時は、さまざまな条件が存在していました。

そのうちの一つが、理系(自然科学系)の大学を卒業していることです。

理系(自然科学系)大学といえど、理工系からバイオ系までその学問分野はさまざまです。そこで石橋さんは、宇宙飛行士に求められる人材像を調べたそうです。

宇宙に関わる上で求められる専門性は変化している

実は、宇宙飛行士として宇宙に関わる上で求められる専門性は時代によって変わります。

それは宇宙に関する計画の目的が徐々に変化し、それにともなって取り組むことも変わっているからです。

また宇宙に関する計画は、国の政策が大きく影響しています。

ただ石橋さんがこのことを調べていた当時、日本の首相が頻繁に変わるタイミングでした。つまり国の政策も頻繁に変わることを意味しています。

このような状況で目指す分野を決めることは、リスクを伴います。

そこで石橋さんは、もっとも汎用性が高い「医学」に焦点を当てました。

これが、石橋さんが医師を志すきっかけとなりました。

純粋な動機でない?石橋さんの葛藤

石橋さんが医学部を目指していて浪人生活を送っていたとき、医学部専門予備校に通っていたこともあり、周囲には医師を志す人がたくさんいたそうです。

その人たちが医師を志したきっかけは

  • 家族が医師のお世話になって…
  • 自分自身が以前病気を患って…

のような、いわゆる「純粋に医師として人を救いたい」というものでした。

これを耳にするたびに、自分が「宇宙に関心があり医師を目指している」ということは良いのだろうかと、疑問を感じていったそうです。

人の役に立ちたい気持ちは同じ、働く場所が違うだけ

確かに一見すると、医師と宇宙には関連性を見出しにくいかもしれません。

しかし、人がいればそこには医療が必要になります

これからますます、人が宇宙に行く時代になっていきます。つまり、宇宙でも医療が必要となる時代です。

「人の役に立ちたいから医師になりたい」というモチベーションはみんなと同じで、「どこで働きたいか」だけが違うということに石橋さんは気がついたそうです。

石橋さんはこの志を胸に、医学部に入学されました。

宇宙医学との出会い

無事医学部に合格した石橋さんですが、実は大学入学当初から宇宙医学に関心があった訳ではなかったそうです。

当時は、宇宙と医学は別物だと考えており、「宇宙に行くために医師になる」と考えていました。

石橋さんが宇宙医学と出会ったのは、大学入学して少ししてのことです。

石橋さんが入学した東京大学は、いわゆる日本における最高学府で、国公立大学の中でも最大規模を誇ります。

それゆえ、優れた人も多く、そのような集団で過ごすうちに、自分自身について悩むようになったそうです。

自分自身と向き合う中で「宇宙医学」を見つけた

そこで石橋さんは、自分が好きなものやそれまで取り組んできたものなど、自分の構成する要素について再考してみたそうです。

再考の中で浮かんできたのが「宇宙医学」。

石橋さん曰く、当時は「この組み合わせ、面白そうじゃない?」という軽い考えだったそうですが、調べていくうちにどんどんのめり込んでいったそうです。

宇宙医学について調べていたとき、あるプロジェクトに出会います。

それは同じく東京大学医学部医学科を卒業された宇宙飛行士・古川聡さんが代表を務めた「宇宙に生きる」というプロジェクトです。

このプロジェクトは、生命科学を研究するさまざまな大学の先生が集まり、宇宙における生命のストレス耐性について研究します。

この研究の面白さを、石橋さんは次のように話します。

「これは、普通とは違う環境で生命がどのように振る舞うのかを見る学問です。地上では当たり前のように存在する重力が当たり前ではない環境で、生物の振る舞い方が大きく変わる。当たり前が崩れ、目から鱗を落とし続ける瞬間が、とても面白いです。」

そしてこのプロジェクトについて理解を深めていくうちに、石橋さんは「もっと詳しく聞きたい!」と、このプロジェクトに携わっていた先生にアポイントを取ってお話をうかがうほど、興味関心が高まっていったそうです。

宇宙医学とは?

中高生のみなさんにはなかなか馴染みのない「宇宙医学」ですが、これは「宇宙で人はどうなるのか?」を研究する学問です。

①宇宙飛行士(宇宙旅行者)の健康管理
②宇宙を使った医学実験

この2つの軸で成り立っています。

宇宙医学に関わっているのは、主にこのような人々です。

  • 宇宙の現場で医師として働く宇宙飛行士
  • 地球で、宇宙で行う実験のプランを立てる科学者
  • 宇宙飛行士の健康管理をするフライトサージャン

宇宙が身近になりつつある今、今後宇宙医学はさらに多様化していくだろうと石橋さんはお話ししてくれました。

石橋さんが団体・プロジェクトを立ち上げるに至った経緯

現在、「Space Medicine Japan Youth Community」という団体の立ち上げ・運営をされている石橋さんですが、このような活動のきっかけは、大学1年生の夏の経験にあります。

「宇宙に生きる」に携わっていた先生からいろいろお話を聞くなかで、石橋さんは研究者の若手合宿に誘われました。

行きたい気持ちとは裏腹に、まだ大学に入学したばかりで研究も論文も全くわからない石橋さんは、「行くにしても何を話せば良いのか?」と悩んだそうです。

そこで閃いたのが「取材」です。

当時、あるネットサイトで、学生サークルの記事を掲載するという企画がありました。石橋さんはその企画を活用して、取材をさせてもらうという目的を持って参加することにしました。

いざ取り組んでみると、さまざまなメリットを感じたそうです。

まず、取材をするという目的があることで、質問の質が高まります

聞いた内容を自分で記事にするとなると、事前に準備する量も、話を聞く集中力も、質問の質も高まります。

さらに実際に記事の構成作業で、お話を伺った先生たちにチェックしてもらうため、先生たちとのやりとりも増えます

また石橋さんが最も強く感じたのが、形にのこるアウトプットをすることの素晴らしさです。

発信をすることで、人の目に留まり、次のチャンスにつながる。得たチャンスの内容を発信することで、さらなるチャンスにつながる。

石橋さんはこの経験から、団体やプロジェクトを立ち上げて運営するようになりました。

石橋さんから中高生へのメッセージ

最後に、石橋さんは中高生のみなさんに向けたメッセージとして、2つのお話しをしてくれました。

1つ目が、「不確定な未来を楽しむ」ということです。

誰しも、大なり小なり、「自分は将来、どうなるんだろう?」という不安を抱えていますが、これは「未来を知りたい」という欲求の裏返しでもあります。

そしてこの「未来を知りたい」という欲求は、人間の根源的欲求でもあります。

あらゆる学問が、「未来を知る」ためのヒントとして発展してきました。

例えば医学の分野であれば、「これから病気になる可能性(=未来)を知りたい」という欲求から、健康診断や出生前診断、遺伝子治療などが確立されています。

未来に対する欲求は、人間の文化を発展させてきましたが、その一方で、未来へのヒントを得ることで「安心」を得ることがあります。

例えば、模擬試験でA判定が出れば、「合格できるかもしれない」と安心できるかもしれません。

しかし実際は、模擬試験でA判定が出ても、その大学に合格するとは限りませんし、不合格になった人は大勢います。

つまり、安心を得るために未来を知ろうとするのではなく、その不確定さを楽しむことで、「今、未来を作っているんだ」と目の前のことにチャレンジできます

石橋さんは、まず「大学受験」という困難に立ち向かう中高生に向けて、ぜひ不確定さを楽しみ、チャレンジしてほしいと話してくれました。

2つ目が、「学生とはチケットである」ということです。

学生とは社会的信頼・自由と無責任を両立できる、貴重な立場です。

社会的信頼・自由と無責任の両立があることで、臆することなくチャレンジすることができます。

例えば、学生というだけで社会人が時間を割いて会ってくれ、また話を聞いてくれたり、話をしてくれたりします。

これは「学生」という身分に社会的な信頼があるからに他なりません。

また仮にチャレンジが失敗したとしても、責任は在籍している大学が負ってくれます。自分自身がダメージを受けることはありません。

また医学生はさらに特殊で、例えチャレンジが失敗したとしても、将来は「医師」という安定した身分があります。

中高生のみなさんには、ぜひこういった状況を最大限活用して、チャレンジしていってほしいです。

まとめ

今回は、石橋拓真さんに「医療×宇宙」をテーマにご講演いただきました。

エネルギーや行動力に溢れる石橋さんのご講演は、参加した中高生の大きな刺激となっているようでした。

ぜひ多くの中高生が石橋さんのようにチャレンジ精神をもち、さまざまな分野で活躍してくれたらと思います。

Avenue Educationでは、医師・医学部を目指す中高生の皆さんを応援しています!

第一線で活躍されている医師やさまざまなことに挑戦している医大生による講演や、AVENUE Educationを応援してくれている志門医学舎さまのご協力のもと、医学部を目指す中高生の学習方法の指導を行う学習サポートコースなどを実施しています。

ぜひ医師を目指す中高生は、AVENUE Educationのイベントをご活用ください!

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