先日、AVENUE Educationを応援してくださっている志門医学舎さんと共催して「医学を志す」特別企画を開催しました!

今回のテーマは「新型コロナウイルスに学ぶ、これからの医師に必要な情報発信」でした。

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今回の「医学を志す」特別企画は、ZOOMを使ったオンラインでのイベントでした。

ご参加いただいた高校生たちから大変ご好評をいただきましたので、今回はイベントレポートをお伝えします!

「医学を志す」特別企画・企画内容

この特別企画は、2日間にわたって開催しました。

  • 1日目:AVENUE Education 副代表 朝倉太郎医師による講演
  • 2日目:参加した学生さんによるプレゼンテーション

現在世間を賑わせている新型コロナウイルスを事例として、医師としての正しい情報発信について考えていきました。

2日目には、先日の開催された「医学を志す」〜横市医学部 Special Edition〜 「デジタル時代の医療情報発信」で御登壇いただきました、株式会社メディカルノート代表取締役の井上 祥先生にも特別ゲストとしてご参加いただきました。

井上先生が登壇された
「医学を志す」イベントレポートはこちら

AVENUE Educationとしては初めてとなるオンラインイベントでしたが、ご参加いただいた学生さんたちはとても生き生きとした様子で、このようなタイミングでもしっかり学びとろうという姿勢が印象的でした!

ではここからは、詳しいイベントレポートをお伝えしてきます!

朝倉医師による「新型コロナウイルス感染症と医療情報」

毎日ニュースで目にする「新型コロナウイルス」。
世界中の人がこの新しいウイルスに強い不安を感じています。

新型コロナウイルスに恐怖するあまり、外出はもちろん、生きるのに必要な通院でさえ嫌がる方もいらっしゃいます。

この強い恐怖心には様々な理由があります。

  • 自分が高齢で、高齢者の重症化率が高いと目にしたから
  • 新しいウイルスなのでどうすればいいかわからないから

さらに、「不確かな情報発信」も新型コロナウイルスへの強い不安感の理由の一つでしょう。

新型コロナウイルスとは何か?

新型コロナウイルスはコロナウイルスの一種で、風邪の原因となるウイルスや以前流行した「SARS」の原因になったウイルスも含まれています。

世界的大流行に至った3つの原因は以下の通りです。

  • 新型であるため免疫のない人が多い
  • 無症状者・軽症状者が多く、気づかないまま他人に移してしまう
  • 治療法・診断法が確立されていない

さらに、かつてよりも外国へ渡航しやすくなった時代背景もあり、国を問わず蔓延してしまっています。

日本の新型コロナウイルス対策は?

連日ニュースでも、各国の新型コロナウイルスに対する対応策が報じられていますが、日本も様々な対策を行っています。

私たちに最も身近な対策で言えば、外出自粛でしょう。

これは人々の外出を抑えることで新型コロナウイルスに感染する機会を減らす目的があります。

これに付随する形で、リモートワークやオンラインでの活動などを中心とした新しい生活様式の確立も進んでいます。

また、私たちの見えないところでは、医療資源や検査体制を充実させるべく対策が進んでおり、また治療法の確立が急がれています。

不確かな情報発信が不安の種になっている

日本だけでなく世界規模で様々な対策がされている一方で、人々が新型コロナウイルスに対して強い不安を感じているのではなぜでしょうか?

その理由の一つは、不確かな情報発信のスピードが早いことです。

今の時代、多くの人がインターネットを使って情報を集めています。

またインターネットが身近になった分、誰でもインターネット上で情報発信できるようになってしまっています。

「大切な情報だ!」という思いが不確かな情報拡散につながる

「悪い情報を広めてやろう」と思って情報発信している人はごく一部でしょう。

多くの人が「これは大切な情報だ!」と思った情報を発信します。

そこで発信された情報が正しいか誤っているかに関係なく、「正しい大切な情報」だとして発信されたものを見た人は「この情報は重要そうだ!」と勘違いするでしょう。

そしてさらにその情報を拡散していきます。

情報拡散の連鎖が不安を生んでいる

このような情報拡散の連鎖から、不確かな情報でさえも正しい情報かのように拡散され、多くの人に信じられてしまいます。

もしこの時、最初の情報発信内容が正しければ、正しい情報が速いスピードで拡散されて行きます。

この情報拡散を正しく活用するために大切なことは、医師として正しい情報を発信し、広げていくことなのです。

参加学生のプレゼンテーション「医師の情報発信」

第1回「医学を志す」特別企画の最後に、参加した学生さんたちには課題が発表されました。

プレゼンテーション課題
あなたはクリニックの院長です。緊急事態宣言発出後、患者たちからCOVID-19に対する不安の声を多く聞くようになっています。みなさんに正しい情報をお伝えし、安心してもらうにはどのような方法を取れば良いでしょうか。自身の情報収集、患者への伝達方法、患者におすすめの情報収集方法、様々な観点から考察してください。

様々な観点から考えることができるこの課題に対して与えられた準備期間は1週間。

翌週に行われる第2回「医学を志す」特別企画で参加学生さんにはプレゼンテーションをしてもらいました。

この回には、AVENUE Education代表 金城瑞樹医師(医療法人優雅理事長・杏林堂クリニック院長)も参加、さらに株式会社メディカルノート代表取締役の井上祥先生もご参加くださいました。

\井上先生のご経歴はこちらから/

実際に医療従事者として第一線で大変ご活躍されている医師たちから直接アドバイスをいただける機会はなかなかありません。

参加した学生さんたちは、自分のプレゼンテーションに対するフィードバックだけではなく他の学生さんへのフィードバックに対しても熱心に耳を傾けていました。

学生さんのプレゼンテーションをご紹介

発表してくれたどの学生さんも非常に工夫の凝らされたプレゼンテーションで、一人ひとり着眼点が異なっておりとても興味深い発表でした。

今回はその中での2名の学生さんのプレゼンテーションをご紹介します。

Aさんのプレゼンテーション

Aさんのプレゼンテーションは「情報収集方法」と「情報発信方法」についてでした。

 

【着眼点1】どのように情報を集めるか?

私たちの身の回りにある情報収集方法には

  • 新聞や新聞社によるニュースサイト
  • Yahooニュースなどポータルサイト
  • LINEニュースなどソーシャルメディア
  • グノシーなどキュレーションサービス
  • テレビやラジオ
  • 書籍や雑誌、論文

など様々なツールがあります。

そのうち医師として情報を集めるにあたって特に活用できるのが、大学で学んだ内容や論文でしょう。

 

さらにインターネット上の情報も活用します。

ただしここで注意しなければならないのが、情報を取捨選択しながら集める必要があるということです。

 

まずは医師である自分が正しい情報を得ます。

これにより、来院した患者さんから受ける質問に対して正しく返答することができます。

 

それと同時に、患者さんが自分で正しい情報を集められるように、情報収集のやり方を伝えていくことも大切でしょう。

 

たくさんの人が、新型コロナウイルスに対して不安を感じています。

そしてその不安から、手軽なインターネットを使って情報を集めています。

インターネットは身近である一方で、正しくない情報が載っていることもあります。

そこで患者さんには改めて、インターネット上には正しくない情報も存在していることを理解していただくことが大切でしょう。

 

また患者さんが正しい情報を得られるように、

  • 新聞・テレビ・ラジオなどで行われている医師による情報提供を参考にすると良いことをアドバイスする
  • 正しい情報が掲載されていると信頼できるインターネット上のサイトを紹介する

ことが、医師である自分にできることだと考えます。

 

【着眼点2】世代に合わせた情報拡散方法を利用する

院長の立場であれば、自分のクリニックに来院していない人々にも正しい情報を広げていく必要があります。

そこで考えなければならないのが、情報発信手段です。

 

情報を拡散する対象の世代によって、情報を集めているツールが異なります

  • 10代:インターネットの利用率は高いがインターネットでニュースを目にすることは少ない。TwitterやInstagram、YouTubeなどを使っていると考えられる
  • 20代・30代:インターネットの利用率が高い

このように、インターネットの利用率が高い世代に対しては、インターネットを利用して正しい情報を発信していくことが有効になります。

また、医師がモデル・芸能人といった著名人に働きかけて情報を拡散してもらうことも効果的ではないかと考えます。

  • 40代以上:インターネットの利用率は10代〜30代に比べると高くない、インターネットよりも紙媒体を使って情報を集めている

40代以上の世代では新聞などの紙媒体を使った情報拡散が有効でしょう。

さらに、全ての世代でテレビを情報収集ツールとして活用しています。

 

このように、各世代の人々がよく目にするツールを使って、

  • コロナ専門家融資の会Twitter
  • メディカルノート

などの情報収集にあたって信頼できるインターネットサイトを拡散していくことが大切だと考えます。

井上先生からのフィードバック
素敵なプレゼンテーション、ありがとうございました!

Aさんのプレゼンテーションは、2つの観点から構成されていました。1つ目の観点は、情報収集方法です。
この点では、どのようにしてエビデンス(証拠)のある情報を得るかが大切でしょう。
このような情報を収集するには、論文・官公庁のサイトはもちろん、各学会のサイトも活用できます。

2つ目の観点は、マーケティングです。
エビデンスのある正しい情報をどのようについて発信していくのか、というのがマーケティングの考え方です。

モデルさんや芸能人の方といった著名な方に情報を発信・拡散してもらうインフルエンサーマーケティングについても盛り込まれていて、非常に面白いプレゼンテーションでした。

Bさんのプレゼンテーション

Bさんのプレゼンテーションは「フェイクニュース対策」についてでした。

 

【着眼点1】なぜフェイクニュースが広まるのか?

フェイクニュースが広まる原因は何でしょうか?

それは不安です。

多くの人が新型コロナウイルスに対して不安を感じています。

この不安感は人を手軽な情報収集へと走らせ、結果としてフェイクニュースが広がります。

さらに新聞やテレビもフェイクニュースが広がるきっかけの一つになります。

これらのメディアによる誤解を招きやすい表現・大袈裟な報道が、フェイクニュースとして拡散されることもあります。

 

【着眼点2】フェイクニュース対策

このようなフェイクニュースをなくしていくためには、どのような対策が取れるのでしょうか?

それは、医療の専門家による大きな組織の設立です。

 

具体的には、このような取り組みがあります。

  • 患者さんにとって「このインターネットサイトを見ると良い」というインターネットサイトの構築
  • SNS・YouTube・テレビによる発信
  • ファクトチェック・イニシアティブと連携したフェイクニュースチェック・修正

 

また、この組織の普及に向けた宣伝も必要でしょう。

特に、テレビ広告や有名人を通じての発信が効果的だと考えます。これは、多くの人々がテレビで発信された情報を信頼しているからです。

このような宣伝を通して、まず組織の存在を多くの人に知ってもらいます。

そしてこの組織を通して正しい情報発信をすることで、フェイクニュースを減らすことができるでしょう。

また来院した患者さんには「医療機関として推奨しています」と打ち出すことで信憑性が上がり、安心して正しい情報を得てもらえると思います。

 

【着眼点3】他業界と連携する

フェイクニュースに対しては、医療業界内での対策以外にも、他業界との連携も必要になるでしょう。

例えば、

  • フィルタリングを強化する
  • 法律を制定し、フェイクニュースに対する規制を強化する
  • 情報社会に合わせた子どもたちのメディアリテラシー教育を推進する

などが挙げられます。

このような様々な仕組みを通して、フェイクニュース対策を進めていくことが大切だと考えます。

井上先生のフィードバック
興味深いプレゼンテーション、ありがとうございました!Bさんには、リテラシーの観点が含まれていましたね。

今はメディアリテラシーを向上させていく必要があると言われる時代になりました。
情報は、その情報の受信する側によって、受け取り方が違います。
来院される患者さんをはじめとして、一人ひとりが置かれている状況が違い、会えるタイミングも、言葉の受け取り方も違います。

メデイアリテラシーとは、このような中で正しく情報発信をするためにはどうするべきか、という考え方です。

置かれている状況・心理状態、言葉の受け取り方が違う人々に向けて、どうすれば相手に合わせて正しい情報を拡散できるのかという点については、医師である私たちが取り組む課題でしょう。

井上先生のご講評

プレゼンテーション、ありがとうございました!

どの学生さんも着目している点が違っていて、とても興味深かったですね!

 

皆さんのプレゼンテーションの中で感じたことは、エビデンスベーストコミュニケーションの重要性です。

エビデンスベーストコミュニケーションは、今私が作った造語ですが、EBM(Evidence-based Medicine)をもとにしたコミュニケーションのことを指します。

Evidence-based Medicine
・最善の根拠
・臨床家の専門性(熟練、技能など)
・患者の希望・価値観
・(個々の)臨床状況
を考え合わせる医療を指します。Mindsガイドラインライブラリ「EBMとは?」にて、京都大学の中山健夫先生がわかりやすく説明してくださっています。

これからの医療を支えていく医師たちは、論文などの最善の根拠を踏まえた上で、目の前の患者様一人ひとりと密なコミュニケーションを図り、医療に従事する必要があると改めて感じました。

 

世界的に有名な外科医師の先生もおっしゃっているように、正解がないと思って進むことが大切です。

私たちメディカルノートも、まだまだこれからです。頑張っていきたいと思います!

朝倉医師の講評

皆さん、お疲れ様でした。

皆さんのプレゼンテーションはどれもよく考えられていて、とても素晴らしかったです。

プレゼンテーションの中に、様々な工夫もありましたね。

 

大切なことは患者様の心理を考えることです。

目の前にいる患者様一人ひとりに合わせた届く言葉を考えなければなりません。

もちろん、話を聞いただけで暗記できる人はほとんどいません。人はすぐに忘れてしまうものです。

そこで、相手に合わせて伝えるだけではなく、伝えたい内容をどうすれば患者様に印象付けることができるのかも重要です。

 

加えて、患者様にとって、テレビやSNS、週刊誌でさえ情報を得るツールになっていることがありますから、

  • 患者様がどのような媒体を使って情報を集めているのか
  • 患者様がどのような情報を得ているのか

を知っておくと、より強いコミュニケーションが図れるでしょう。

医師としては、患者様が情報を正しく理解するお手伝いができているのかどうかという点は、非常に大切なのだと思います。

金城医師のご講評

学生の皆さん、プレゼンテーションありがとうございました!

色々なプレゼンテーション内容があって、どれも素晴らしかったです。

 

今回みなさんが発表してくれたもののなかには、すでに実践しているものも多くあります。

ただ、どれだけ私たちが一生懸命取り組んでいようとも、様々な患者様がいらっしゃいますから、完璧はありません。

そこで私たち医師が考えなければならないのは、「不安を抱えている患者様を安心させてあげるにはどうすれば良いか?」ということです。

 

 

私たちはいつも、「患者様が一番幸せになるために」という観点から考え、行動しています。

手段は様々ですがこの根幹にあるのは、情熱を持ってやっていくことです。

情熱がなければ、どれだけ正しい情報でも患者様には伝わりません。

これから医師を目指すみなさんには、どうかその情熱を忘れないでいて欲しいと思います。

「医学を志す」を通して医師になる志を育てよう

今回、志門医学舎さんと共催して行われた「医学を志す」の特別企画のイベントレポートをお伝えしてきました。

医学部受験は長く苦しい闘いかもしれません。

受験勉強を続ける中でふと見失ってしまいがちですが、皆さんのゴールは医学部受験合格ではなく、医師として活躍することでしょう。

そこで大切になるのは、医師としての自分を想像することです。

「医学を志す」では、実際の医療現場で患者様と向き合っている現役医師や医大生と実際に交流することができます。

普段関わることが難しい「少し未来の自分」と出会うことが、医学部受験のモチベーションにもなります。

ぜひ医学部受験を考えている中学生・高校生の皆さんは、「医学を志す」に参加してみてくださいね!

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過去の「医学を志す」イベントレポートはこちら

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